《AID》シリーズは、スマートフォンのドローイング制作アプリを用いて風景をスケッチし、その画像をキャンバス上に投影してなぞるように描くという手法で制作されたシリーズ。本作は、広島の原爆ドームを描いている。
原爆ドームは、現在に至るまでさまざまなメディアに収められてきた。元安川をはさんで原爆ドームを眺める画角は、その代表的なイメージのひとつとして挙げることができるだろう。あるときは写真家の手によって、あるときは観光客がSNSにあげるため、あるいは、近隣の小学生が平和学習のスケッチするためなど、プロアマ問わず様々な目的のもとドームは切り取られ続けている。
本作は、そうやって繰り返し切り取られ生産され続けてきた原爆ドームの姿を今日的に捉えつつ、その記念碑的な性格を倒錯させるため、ある種の軽さをもって原爆ドームを描いている。